贋作・罪と罰

贋作・罪と罰
NODA・MAP 第11回公演
12/14 夜@シアターコクーン
作・演出・出演:野田秀樹
出演:松たか子 古田新太 段田安則 宇梶剛士 美波 マギー 右近健一 小松和重 村岡希美 中村まこと 進藤健太郎

 ドストエフスキーの『罪と罰』の時代・場所を幕末の日本に移した、NODA・MAP第2回公演作品(95年)の再演。


 四方を客席が囲む中央配置のひし形の舞台を縦横無尽に使い作られていく世界、そして緊張感に圧倒される2時間。布状のビニールと椅子を中心に用いて空間全体を使う動きはシンプルだけにインパクトがあり非常に美しかった。野田氏の物の使い方には誰にも勝てないと再確認。

 初演との違いで目立ったのは、英のキャラクター。混乱が強い初演の大竹・英よりも、間違ったことなんかない、という色が強い松・英という印象。筧・才谷よりも体格的にも包容力が強い古田・才谷。最初キャストを聞いたときはなんという組み合わせ、と思っていたが、終盤、罪を受け入れきる英の緊張からの開放のシーンが際立ち、良かった。古田さんが台詞間違えても聞いてて集中切れなかったほど。
 また、衣装が実に強烈だった。前回は黒っぽい色同士だった英と才谷が、赤と黒の対象となり美しい、としか最初は思っていなかったが、ラスト、舞台をビニールによる雪が覆い、才谷が殺された時、鳥肌が立った。英の赤が、才谷の血の色に感じられたからだ。血で汚した大地に雪が積もり一面の白となった上での悲劇。『赤鬼』でも思ったが、何故野田氏の芝居はこんなにも綺麗なのに残酷なのだ…。

 逆に初演との共通点で気になったのは、舞台横で待っている役者がドアを開ける音など鳴らしていたこと。初演でも面白くて好きだったので嬉しい。

 古田新太氏は相変わらず散々笑わせておいて最後にはかっこいい。終盤の決め台詞の静かさが素晴らしかった。筧・才谷の「たまらーーーーん!!」と正反対の古田・才谷の「たまらん…」は可愛ささえ覚えてしまった。ある意味お2人らしい台詞づかい。
 英の父な中村まこと氏の演技も素晴らしかった。と書いておいてなんだが、彼の演技で一番印象に残ってしまったのは野田氏演じる英の母とのキスの後の微妙な表情とものすごい間だった…。

 初演が大好きな『贋作・罪と罰』の、それと並ぶ、もしくは上回る再演を観れて非常に幸せでした。

 当日券でも観やすい舞台構造なので、もう一度観るかもしれません。